『蟻の菜園 ―アントガーデン― 』柚月裕子 つらくて切ない。それだけで終わってくれれば同情するだけで良かったのに

彼女の作品では、上川隆也さんの主演でドラマにもなった佐方貞人シリーズ(シリーズというほどのボリュームでもないけど)が、一念岩をも通すって感じの主人公の生き方に賛同できた良い作品だった。
最後の証人 (宝島社文庫) 検事の本懐 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
彼の台詞もキマッテいる。

罪と情状酌量(感情は定量で図れるのか)に関しては現実の世界でも『本当にそれでいいのか』という判決がいくつもあるけど、何を拠り所としているのか、それを拠り所にすべきなのか、ということには法律家ではないのでちゃんとした答えは持ってない。ただ…
悪がある。確かに悪が。
愛がある。確かに愛が。
でも、救いがない。救い甲斐がない。
蟻の菜園 ―アントガーデン― (『このミス』大賞シリーズ)
彼女を救ってくれたたくさんの優しさを簡単に踏みにじれるだけの愛がそこにある。
それを愛と呼んでいいのか。
何を書けばいいのか迷ったのはそういうところ。今もよくわからない。

進行もトリックもご都合主義に感じてしまった。
『かわいそう』ではなく『これではいけない』という投げかけにしたかったのかもしれませんが、『かわいそう』でいいんじゃないかな。

アナタ…とか、描き切れていない部分は割愛すべきだったのではないか、などと作家気取りになってしまった。

『蟻の菜園-アントガーデン-』柚月裕子 著/連続不審死容疑者の闇 - 新刊レビュー ~東北の本棚より~

そう読み取ればいいのか

2016/04/16 14:47